平成29年度研究プロジェクト

  1. アーサー跡公式とその応用に関する研究 (5人:代表者:若槻,協力者:大浦,菅野,高信,早川)
    主な計画) 他のメンバーとともに引き続き跡公式と保型形式の研究を推進する.6月と7月にはOklahoma大学のKimball Martin氏が金沢大学に滞在し,本プロジェクトに関係する共同研究を遂行する.具体的にはヘッケ作用素の固有値の合同関係式について研究する.また北陸数論研究集会2017が12月26日27日に計画されており,本プロジェクトの菅野と若槻が世話人として関わる.
    報告:プロジェクトの代表者の若槻は,ドイツのFinis氏,Hoffmann氏,Ramacher氏とオクラホマ大学のMatrin氏とプロジェクトの研究を推進した.具体的な成果としては,GL(3)の跡公式に関する明示的なフーリエ変換の公式を得ることに成功した.さらに,ヘッケ固有値の合同と保型表現の関手性との間の関係付けを明らかにした.また北陸数論研究集会2017の世話人を行った.
  2. 重み付き開リーマン多様体の理想境界に関する研究 (5人:代表者:加須栄,協力者:岩瀬,牛島,川上,川越)
    主な計画) 重み付き開リーマン多様体の倉持境界に拡散過程が収束する.この事実に基づいて,リーマン多様体から適当な距離空間へのディリクレエネルギー有限写像の境界付近での挙動についての有益な知見を得ることを目論む.ガウス写像の値分布論の展開へ貢献できる可能性がある. 報告:代表者は,非線形抵抗回路 (ネットワーク)のエネルギー有限な関数空間とコンパクト化 (理想境界)の理論を作った.専門誌で発表予定である.一方で川上は,極小曲面と極大曲面を研究し,測地的理想境界の視点からの研究を進展させ,2編の研究論文を著したまた,2つの研究集会 (第64回幾何学シンポジウム (2017年8月28日—31日,金沢大学),研究集会「多様体上の微分方程式」 (2017年11月16日—18日))を開催し,様々な情報交換を行い,プロジェクトの研究の進展を図った.さらに第23回複素幾何シンポジウム (金沢,2017年11月7日—10日)の組織委員を務めた.
  3. 破壊現象に関する学際研究と数理モデリング (6人:代表者:木村,協力者:生駒,大塚,野津,Pozar,(和田出))
    主な計画) 国際研究集会 (CoMFoS17:2017年,OIST)の開催と,基礎的な研究に関する大学院生を交えた英語セミナー (KUAS)の継続.粘弾性・塑性変形・残留応力などを伴う材料における変形・破壊の現象の数理モデリングと数学解析を行う.
    報告:2016年に開催した国際会議のプロシーディングスを,Mathematical Analysis of Continuum Mechanics and Industrial Applications II, Proceedings of the International Conference CoMFoS16, P. van Meurs, M. Kimura, H. Notsu (Eds.), Springer (2017),として発行した.また昨年度に引き続き,木村がオーガナイザーとなり,2017年9月20日~22日に国際研究集会CoMFoS17を沖縄科学技術大学院大学で開催し,連続体力学の数理解析に関する数学・物理学・工学・産業界の国内外の約40名の研究者が参加した.また,基礎的な研究に関する英語セミナー (KUAS)を定期的に開催した.粘弾性・残留応力などを伴う材料における変形・破壊の現象の数理モデリングと数学解析を,科学研究費および企業との共同研究により推進し,一部の成果については日本応用数理学会などで発表を行った.
  4. 不連続な界面現象の数理モデル研究と産業応用研究 (3人:代表者:小俣,協力者:木村,野津)
    主な計画) 引き続き富士通,PFU,YKK,旭硝子,東和精機などとの共同研究を推進する.
    報告:小俣・木村とその大学院生が中心となり,富士通,PFU,YKK,旭硝子,東和精機などとの共同研究を推進した.また,昨年に引き続き,学生インターンシップや東京大学での産業界とのスタディーグループ研究などの活動を行った.また,関連して以下の国際研究集会を開催した.
  5. 医学の諸問題に対する数理的研究の新展開 (7人:代表者:木村,協力者:大塚,小原,野津,中村,生駒,(佐藤))
    主な計画) 昨年度までの「先魁プロジェクト:幹細胞とがんの数理生物学」以来の連携研究を推進するとともに,医療への応用を視野に,光トモグラフィなどの医療技術の数理モデルについて研究動向を調査する.
    報告:平成28年度までの先魁プロジェクトに基づく医学系研究者との連携研究を推進し一定の成果が得られたため,共同研究論文の準備をすすめた.また,医療への応用を視野に,光トモグラフィなどの医療技術の数理モデルについて,浜松医科大学の町田学講師などと連携し,研究動向の調査を行った.
  6. 量子ウォークと組合せ論の新展開 (3人:代表者:小栗栖,協力者:大浦,川越)
    主な計画) 作用素論的手法による量子ウォークのスペクトル構造の解析の昨年度の成果をCubic QW,simpletical QWへ適応し,量子ウォークとIhara-Zeta関数の関連において大浦と小栗栖の協働をはかる.また学外の研究者との協働をさらに拡大する.
    報告:dn+型の符号の重み多項式環の構造を考察した.weight enumerator, intersection enumerator, Jacobi polynomial の高種数版を考察し,それらの間の関係式を与えた.8の字結び目の色付きHomfly多項式の一般化を考察した.次数が低い場合については公式が得られた.
  7. 可積分系と特殊関数論の理論と応用の新展開 (3人:代表者:名古屋,協力者:伊藤,小原)
    主な計画) 平成29年度には,2次元共形場理論における共形ブロックの特異点の Poincare ランクが半整数であるときの共形ブロックの定義を与え,それを用いてパンルヴェ関数の漸近挙動や,特殊解として現れる合流超幾何型積分表示の漸近挙動を解析する.また,次の研究集会を主催する. 報告:2次元共形場理論における共形ブロックの特異点の Poincareランクが半整数であるときの共形ブロックの定義を与えた.また量子トロイダル代数の表現論から得られる q 共形ブロックを用いて,第六 q 差分パンルヴェ方程式のタウ関数のフーリエ展開を得た.関連して以下の研究集会を開催した.
  8. 公開セミナー「金沢数理データサイエンス研究会」の立ち上げ (6人:代表者:大塚,協力者:小原,小俣,木村,中村,Pozar)
    主な計画) 社会からの期待が高い数理データサイエンスについて,萌芽的研究に繋げることを目標に,最新の研究動向を調査するための研究会を立ち上げる.
    報告:データサイエンスの様々な側面に関する学外の専門家に依頼し,計5回のセミナーを行った.学内外の反響も大きく,延べ参加人数は151人 (内,数物科学類以外は43人)に及び,大変盛況に実施できた.これをきっかけに,数学コース4年生の課題研究にデータサイエンスを取り上げるなど,新たな展望を持つことができた.

平成28年度研究プロジェクト

  1. アーサー跡公式とその応用に関する研究(代表者:若槻,協力者:大浦,菅野,髙信,早川)
    主な計画)サバティカル取得(若槻)による研究推進とそのサポート.
    報告:プロジェクトの代表者の若槻は平成28年度の前期(半年)にサバティカルを取得し,プロジェクトの研究を推進した.サバティカル中はドイツの三つの都市(Bielefeld, Leipzig, Marburg)および京都大学にそれぞれ2ヶ月間の滞在を行った.具体的な成果としては,例外群G_2の跡公式の幾何サイドと新谷ゼータ関数の関連付けに成功し,そして重さが0でないマース形式の上限ノルムの新たな評価を得ることに成功した.また第61回代数学シンポジウムにおける数論に関するプログラム委員,金沢数論ミニ集会2016および北陸数論研究集会2016の世話人を行った.
  2. 重み付き開リーマン多様体の理想境界に関する研究(代表者:加須栄,協力者:岩瀬,牛島,川上,川越)
    主な計画)研究集会「多様体上の微分方程式」(2016年11月17-19日,金沢大学サテライトプラザ)開催.
    報告:ディリクレエネルギ―有限な関数のなす空間の観点からのコンパクト化の幾何解析的な研究を進展させた.この研究は,ディリクレエネルギー有限な調和写像が重要な役割を果たす有理型関数の値分布理論との関係から極小曲面のガウス写像の函数論的性質の研究とも結びつく.後者の一つのまとめてして日本数学会編集雑誌「数学」において,論説『曲面のGauss写像の値分布』(川上裕)を著した.また,研究集会「多様体上の微分方程式」を金沢大学サテライトプラザで開催し,様々な情報交換を行い,プロジェクト研究の進展を図った.
  3. 破壊現象に関する学際研究と数理モデリング(代表者:木村,協力者:生駒,大塚,野津,Pozar,(和田出))
    主な計画)国際研究集会(CoMFoS16:2016年10月22-24日,九大IMI)の開催と,基礎的な研究に関する大学院生を交えた英語セミナー(KUAS)の継続.
    報告:昨年度に引き続き,連続体力学の数理に関する国際研究集会(CoMFoS16:2016年10月22-24日,九大IMI)を開催し,数学・工学・物理学・産業界など幅広い分野から参加者があり,その成果をSpringer社からProceedingsとして2017年夏に発行予定である.また,金沢大学においては,基礎的な研究に関する大学院生を交えた英語セミナー(KUAS)を継続してほぼ毎週開催した.
  4. 不連続な界面現象の数理モデル研究と産業応用研究(代表者:小俣,協力者:中村,Pozar)
    主な計画)富士通,PFU,YKKなどとの共同研究推進.
    報告:小俣を中心とするメンバーに加え,木村も参画し,富士通,PFU,YKK,東和精機,旭硝子などとの共同研究を推進し,学生インターンシップや東京大学でのスタディーグループ研究などの活動を行った.
  5. 幹細胞とがんの数理モデルの解析(代表者:木村,野津,大塚,中村,生駒,(佐藤))
    主な計画)「先魁プロジェクト:幹細胞とがんの数理生物学」との連携研究推進.
    報告:「先魁プロジェクト:幹細胞とがんの数理生物学」に参加し,医学系研究者との共同研究を行い,慢性骨髄性白血病やESがん細胞の数理モデル開発とシミュレーション・数学解析などを行った.
  6. 量子ウォークと組合せ論の新展開(代表者:小栗栖,協力者:大浦,川越)
    主な計画)対外的な共同研究の推進.
    報告:作用素論的手法を用いることで,量子ウォークの抽象モデルのスペクトル構造をあるランダムウォークのスペクトルと対応づけることができた.また通常の量子ウォークは離散グラフ上で定義されるが,その高次元化を学外の研究者(東北大の瀬川悦生氏,九州大学の松江要氏など)との共同で完成させた.
  7. 可積分系と特殊関数論の理論と応用の新展開(代表者:名古屋,協力者:伊藤,小原)
    主な計画)「数式処理とその周辺分野の研究」(2016年11月9-11日,神戸大学)運営,「Risa/Asir Conference 2017」開催(2017年3月,金沢大学).
    報告:2次元共形場理論における共形ブロックは, その特殊化として Gauss の超幾何関数などの特殊関数を含む, 新たな特殊関数である.AGT対応を通じて, 4次元超対称性ゲージ理論の Nekrasov 分配関数と共形ブロックが一致する事も知られている.特に共形ブロックの確定特異点での展開は明示的な表示をもつ. 本プロジェクトでは, Kummerの合流型超幾何関数を含む不確定共形ブロックを定義し, それを用いてパンルヴェ関数を解析することを目指していた. 平成28年度には, 特異点のPoincare ランクが整数であるときの共形ブロックの定義を与えることに成功し,それを用いてパンルヴェ第4,5タウ関数の漸近展開を与えることができた. また,計画されていた研究集会以外にも,第6回「ハミルトン系とその周辺」研究集会ーKAM理論に関するL.H. Eliasson 教授連続講演とワークショップー(2017年3月8日~10日 京都大学情報学研究科)などを企画運営した.

平成27年度研究プロジェクト

主要研究課題に対し,主に,代数,幾何,解析の3グループに分かれて研究を行った.グループでは,代表者が研究を進めることに協力すると共に,研究力の拡がりを維持するために,個人のアイデアに基づいた研究を進めている.

平成26年度研究プロジェクト

数学では幾何,代数,解析の3グループに分かれて研究を行った.

幾何グループでは大まかな目標として,多様体の大域的構造,グラフなどを研究対象として幾何本流の研究を推進している.ここでは,曲面のガウス写像の像の様相と曲面の大域的性質との関係について調べ,3次元双曲型空間内の平坦波面の標準形式の比となる有理型関数の値分布論的性質についての成果を得て,さらに有限連結グラフの拡大定数の評価について,双曲空間に埋め込まれているグラフを考え,拡大定数の幾何的な評価式を与えた.

代数グループでは,一般次数のジーゲルカスプ形式の空間に関する次元公式の予想の一部を解決する結果をはじめとして,組み合わせ代数では,二つの32次元の extremal even unimodular lattice を2つとってきた場合の,種数4のテータ関数の差について詳しく解析した.さらに応用として多変数超幾何関数の計算複素解析と数式処理を用いた公式の導出を目標に研究を行い,結果を得た.

解析グループでは,微分できない解を持つ特異的な微分方程式に焦点を当て,ジャンクションが移動する曲面発展問題,フェーズフィールド亀裂進展モデルなどの研究を行った.また,非線形シュレーディンガー作用素のスペクトル解析に基づく超格子構造の解析を行った.また,空間不均一な Hele-Shaw 問題の自由境界が Homogeneous な解の自由境界へ収束することなども示した.従来より平衡状態にある点渦系の平均場に関連するゲルファント問題と呼ばれる2次元の非線形固有値問題について,線形化作用素の固有値の精密の精密な挙動について解析を進めている.その研究を深化させ新たな研究課題を見いだすとともに,固有関数のMorse指数,形状などに関する以下の論文を公表した.

解析グループを中心としてCREST応募のためのチームを組んで破壊現象の数理をとりまとめるプロジェクトをスタートしている.中心は木村教授で,弾性体の破壊モデルを構築し,それに必要な数学的背景を整備しようという計画である.ここでは微分方程式の解が連続ではないものが現れ従来の取り扱いでは困難であった問題群である.これに対してフェーズフィールドの考え方を導入し,ミクロな連続体破壊モデルから地震時の地殻断裂モデルまでを構築するべく研究を続けている.

また,富士通次世代テクニカルコンピューティング本部との共同研究として磁性体内磁界のスパコン向けの効率よい計算方法の開発を行った.さらにPFUと協同セミナーを持ち,機器の摩擦・振動などの解析の可能性についての検討を行った.